空の中

空の中

空の中

読んだ順が逆転しているけど、「海の底」の前のハードカバー。
そしてこれもやっぱり面白かったです。
それと比べると、青春小説としての側面が多少弱くなって、その分SFが強くなった感じ。


200X年、四国沖上空で起きた2つの航空機墜落事故。そして2万メートルの上空で発見された巨大生命体。
空自三佐だった父親を高空での事故により亡くした少年・瞬は謎の生命体フェイクと出会う。日本航空業界の起死回生をかけたテスト機パイロットを同じく亡くした少女・真帆は父の仇をとろうと組織を立ち上げる。
MHIの事故調査員として岐阜を訪れた高巳は、三佐のラストフライトをともにした光稀との飛行時に思わずも未知とのファーストコンタクトをとることとなった。
この三者三様の行動が、思わぬ展開を迎える・・・


温厚で高度な知能を持った日本語を解する生命体という抜群の条件がそろった中で行われる巨大生命体【白鯨】との「交渉」がなによりの見所。
単一生命体であったために集団という概念を持たずまたその状態に強いストレスと感じる相手に対し、巧みに言葉を繰り出し交渉を進めていく高巳の描かれ方は全編通して圧巻です。
瞬サイドの「過ちに気づきながら戻れない」という青春ストーリーもいいのですが、個人的にこちらの方がヒット。
あー、自分もこんなに上手くプレゼンすすめてぇ。
全体的にまとまってるし面白いのですが、少し残念に感じたのが展開の早さ。
せっかくハードカバーで400p以上もあるのに、後半の自衛派との交渉後あたりからのクライマックスが少し詰まりすぎな感じ。一番おいしいシーンもサポートキャラにとられて、その辺りが「惜しいなあ」と思いました。ここがもうちょっと上手く回っていれば海の底と同レベルの絶賛をしたのですが。
しかしそれでもよかったです。交渉時の光稀の立場もそうだし、瞬を一生懸命支えようとする幼なじみの佳乃の健気さや、自分の決断を信じることによって突き進もうとする真帆など、女性キャラの描かれ方それぞれに味がありました。普段男性作家ばっか読んでる自分にとって、主婦作家というのはちょっと新鮮。
「街」「空」「海」と3作来たので、今度はプラネテスみたいなの読みたいなあ。